江戸時代には、儒教の教えが社会に広まり、親に対する孝、主人に対する忠などの徳目が尊重されました。諸藩では、庶民教化のねらいから、孝行者や忠節者の表彰が行われ、会津藩でも、保科正之の治世以降、領民に対する褒賞がたびたび行われました。「会津孝子伝」は、会津領内で褒賞を受けた人物をはじめとする忠孝者たちの伝記です。作者の森守次(雪翁)は、若松城下の町名主役を勤め、学問も修めた人物で、宝永7(1710)年に、この書物をまとめました。とりあげられている忠孝者たちは、為政者の目から見た理想の農民や商人・職人たちということもできます。また当時の社会の考え方を基準に選ばれた「善行」なので、現代人にとっては違和感を覚える内容も含まれています。それでもなお、この書物が魅力的なのは、描き出されることの少ない会津の庶民の暮らしや生き方を伝えているからではないでしょうか。出典:福島県立博物館 IM